メバロチンという高コレステロール血症に効果のある薬があります。このクスリは心筋梗塞の発症を抑制するとのハデハデの宣伝で、一年間に一一四〇億円もの売り上げを誇っています。メバロチンは確かによいクスリですが、年間一二四〇億円の価値があるかどうかは別問題になります。年間二一四〇億円の価値を計算すると、日本の看護師全員の給料を月二万円増やすのと同額になります。数人の心筋梗塞の患者を助けることと、看護師全員の給料を月二万円増やすことのどちらがよいかの価値判断になります。
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もちろん数人の心筋梗塞の患者を助けることが大切だと思う人達が多くいると思いますが、メバロチンを飲んだ一〇〇万人のうちで一〇〇大が心筋梗塞になり、メバロチンを飲まなかった一〇〇万人の中では一二〇人が心筋梗塞になるという成績であれば、クスリの価値をどのように判断すればよいのでしょうか。医学的には一〇〇万人全員にメバロチンを投与するのが正しい行為となります。これは統計的にも医学的にも正しいことです。しかし、メバロチンの年間一二四〇億円の価値に見合うかどうかは判断が分かれます。もちろんメバロチンを内服するよりは、タバコをやめるほうが心筋梗塞には効果があります。心筋梗塞にカネを使うのであれば、タバコを止めた患者に奨励金を出した方が予防効果があるのは当然のことです。