一九五〇年代後半から、受験競争が激化し、四当五落という言葉が用いられるようになったことは、教育界、とくに教育学者たちを憂慮させた。このころには、すでにアメリカの子ども中心主義の「新しい教育」の考え方が入ってきていたし、戦前の教育の試験漬けの発想が否定されていたが、五〇年代になると高校進学熱が高まって、中学生くらいから勉強のしすぎや受験プレッシャーが問題になっていたのである。このころの教育学者の偉いところは、そのような憂慮があると、すぐにその真偽を確かめるべく、比較的大規模な調査を行うことである。現代の日本の教育改革がうまくいかなかったのは、実は長年、あてになる数字のデータがなかったからでもあるのだ。この際に、京都と神戸の中学三年生を対象に、京都大学教育学部の教授たちが行った調査では、確かに子どもの勉強時間は今よりはるかに長かった。家庭での学習時間が一時間未満の生徒は、わずかに一七パーセント、それに対して三時間以上の生徒が五〇〜七〇パーセントを占める。昨今の調査と比べると隔世の感がある。