何も入っていない。それを確認した姉は大きく息をつく。「よかった。まだ殺していないわ」「どういうこと?」「彼は誰かを殺したら、このバックで運ぶつもりだったの」「そう彼が言った?」しばらく姉の返事は返ってこなかった。私たちはファスナーをまた元通りに閉めた。「彼はまずこの私を殺すつもりだったのよ。私が懇願したの。殺してほしいって」「それは過去が辛いから?」「過去と今が辛いから。とにかく私が死んだら、このゴルフーバックのなかに入るのよ。ゴルフーバックのなかを探してね」と、その時、音が聞こえてきた。ファスナーの開く音だ。私たちはゴルフーバックを凝視する。ゴルフーバックのファスナーがゆっくりゆっくりと勝手に開いていく。私たちは顔を見合わせる。ファスナーは開ききると、ため息が聞こえる。私たち二人のため息ではない。とすると、ゴルフーバックのなかに誰かがいる?しかしさっきは誰もいなかったし、死体もなかった。ゴルフーバックのなかから腐った手が出てきた。腐臭がする。中身がゆっくりと起き上がる。それは肉がすっかりと腐り、ところどころ骨まで見え、目玉は片方だけになり、髪が抜け落ちた中年女だった。