レールが途切れる瞬間はいきなりやってくる

2011.11.04

入社から数年後にはそんな空気が変わり始めたという。「それまで無条件で昇格していた社内資格に、急にいろいろ条件がつくようになった。うちの会社だと、それまで入社八年目で主任昇格だったのが、自分たちの代から実質七割程度しか上がれなくなったんです。あれはショックでしたね。なにか自分があるとずっと信じてきたものが、実は幻だったような……そんな感覚です」。彼自身が頑健無比だと思っていたレールが、実はボロボロの危なっかしい代物だと気づいた瞬間だ。

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決定的な転換点はじきにやってきた。昨年、隣の部の一つ後輩が、O氏より先に課長昇格したのだ。「聞いた話では、会社側は成果主義の名のもとに、もう四〇代以上は課長に上げない方針だということです。なんとかして組織を若返らせたいんでしょう」彼のレールがまさに終わった瞬間だった。序列が上がらない以上、基本的に給料は上がらない。定期昇給も七年前から見送りが続いており、ずっと給与は横ばい状態だ。旅の終着点は、予想よりずっとずっと手前だったわけだ。「ショック?いやあ、もう慣れましたね。それに実際、僕らのあとから入ってきた人間は非常に優秀ですよ。抜かれてもしょうがないかなとは思う」そう笑って話してくれたO氏は、実はつい前日、本年夜中に子会社の課長職として出向することが決まったという。土壇場で、彼のレールは先へつながった。最後に、いちばん聞いてみたかった質問をぶつけてみた。一〇年前といま、自分のなかで何かもっとも変わったか。「八〇年代にバンドブームつてあったでしょ?僕も学生時代にやってたんですよ。それをまた始めたんです。バンドのメンバーもなんだか、会社以外の居場所が欲しいと感じているんでしようね」。レールの上だけが人生ではない。ただ、それを受け入れられるのは、レールで行き詰まってからなのかもしれない。