トータルバランスを備えた視界

2011.06.16

二十世紀の後半五十年、特にこの二十年、いや三十年で住環境は大きく変化した。歴史を振り返る立場にいないと、こうした劇的な変化はつかめないものだ。現役の若者にそれをいっても、おそらく理解しがたいだろう。年配者の強みは、仮に短期間ではあっても、社会構造の変化をたどれる点にある。「これまでの三十年」を分析すれば、「これからの三十年」が見えてくる。プラスマイナス三十年の考察とは、それを意味しているが、社会分析は、正確に行わなければ役に立たない。目に見えない因果律をきちんと把握できなければ、駄目なのだ。勉強しない経営者に存在価値がないというのは、組織のリーダーには、それだけ責任があるということなのだ。あらためていうまでもないが、衣食住の「住」というのは、いろいろな社会・経済環境、家庭の構造・構成、個人の嗜好など、さまざまな要素(時代的な背景)によって需要が変わる。そのファクターが大きく変化しているいま、「住まい」のあり方もまた、明確に変わりつつあるのだ。消費者の嗜好の変化、社会環境による需要の推移など、おそらく今後、衣食住は区分して考えること自体、あまり意味を持たなくなるのではないか。したがって、「住」を「住」だけでとらえるのではなく、「総体」としてとらえなおさなければ、需要を喚起することはできない。いま、間違いなく「住まいのターンアラウンド」現象が起きている。つまり、建設・住宅分野における再生(再構築)への方向転換が顕在化しつつある。ということは、需要の背景にあるもの、その根底を探らなければ意味がないことになる。社会構造の仕組みは、家の住み方も変える。晩婚化や離婚率の増加、単身家庭、高齢独居……。このことと社会保障制度の歪み、少子高齢化社会の進捗はリンクしている。決して分断して考えられるものではなく総合的にとらえる必要がある。これからの経営者、企業トップに必要な資質は、トータルバランスを備えた視界ということになる。

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